通信販売
度の入ったメガネはファッションアイテムであると同時に、医療機器でもあります。
メガネは適切な測定、調整が行われてなければ、見えにくいだけでなく、眼が疲れやすくなったり、肩こり、頭痛、睡眠障害、うつ症状など、健康への影響があります。
通信販売では、快適なメガネを提供するために必要な作業ができません。
眼鏡作製技能士の前身資格である認定眼鏡士は通信販売を行ったのが発覚した場合、資格剥奪になる場合もありました。
フレームを通信販売で購入してレンズのみを店舗で購入することは可能ですが、フレームの形状や強度、状態によってはレンズを入れる加工ができない場合もあります。
通信販売ではできないこと
◆アイポイント測定とレンズの中心合わせ
快適にメガネを使用するためには、実際にフレームを掛けた時の、レンズの視線が通る位置である「アイポイント」の測定が必要です。
そのアイポイントとレンズの光学中心を合わせた加工をしないと、物の見える位置がずれたり、歪んだり、ぼやけて見えてしまったりします。
通信販売ではアイポイントとレンズの光学中心が一致してない可能性が高くなります。
◆フィッティング(フレーム調整)
メガネフレームは、製造された状態ではほとんどが未完成な状態です。
お客様の顔に合わせて初めて完成されます。
フレームの開き具合や、鼻パッドの当たる位置、耳に係る部分等を調整する必要があります。
掛け心地は、ずり下がってきたり、鼻や耳などの接地部分が痛くなったりするだけでなく、見え心地にも影響します。
アイポイント測定前のフィッティングも重要です。
通信販売では、お客様の顔に合わせたフィッティングはできません。
◆テストレンズで見え心地体験
メガネレンズは度数が適切だとしても、遠近両用レンズなどの場合、設計の種類やグレードによって、見え方が異なります。
テストレンズで実際の見え心地の体験と比較をして、歩いてみたり、遠くの景色や本などの文字、パソコン等を見て頂いてから、レンズの種類を選ぶ必要があります。
通信販売では、テストレンズによる見え心地の体験や比較はできません。
◆メンテナンス
掛け外す必要があるメガネは、微妙なずれが少しずつ蓄積されていきます。
そのずれは見え方に影響していきます。
定期的なメンテナンスが必要です。
通信販売ではメンテナンスはできません。
まとめ
以上の様にメガネは対面販売によるさまざまな調整や作業が必要な商品です。
通信販売で購入したメガネの見え方が適切でない場合でも、適切な見え方を知らないので、ご自分では見え方が適切かどうかわからない場合があります。
また、度なしの伊達メガネや、サングラスでも快適に使用するには対面販売によるフィッティングが必要になる場合もあります。
公益社団法人 日本眼鏡技術者協会の見解
消費者のみなさまは、WEBや新聞広告で眼鏡を通信販売する業者を数多くご覧になっていることと思います。
眼鏡販売は、測定・フィッティング・アフターフォローなどお客様と対面することで初めて可能な技術行為を伴う販売です。
ところが通信という販売手段では、対面による技術行為は不可能で、必要な眼鏡調整技術を完遂しておりません。そのような業者がいくら眼鏡販売と表現していても、良識ある眼鏡技術者の行為とは言えません。
なぜなら眼鏡は、完成された状態でお客様のお顔に正しくフィットされて、初めて機能を発揮するものだからです。
またこのような業者の中には「フィッティング等不具合であれば、お近くの眼鏡店で直してもらってください。おそらく無料で直してくれます」などと標榜す るところもありますが、自店の商品について、事後のフィッティングや不具合のアフターフォローの責任を一方的に他の販売店に転嫁することは、眼鏡技術者に 課せられた販売者としての責任を放棄する行為で、商倫理として許されるものではありません。
消費者のみなさまは以上のことにご理解頂き、良識と責任を持った認定眼鏡士のいる眼鏡取扱い店を選んで頂きますよう、お願い致します。
#眼鏡作製技能士
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